さまよえるままゆく雑記

■ドラマ版Falloutが思いのほか良かった

正直全然期待していなかったが、思いのほか名作であった。

単体で優れているだけでなく、原作ゲームファンを頷かせる要素がぎっしりと敷き詰められている。まさしく神は細部に宿る。

 

明確な主要人物として描かれているルーシー、マキシマス、"グール"(名称は一応伏せる)それぞれのS.P.E.C.I.A.LやSKILL、perkも想像がつくような描写がふんだんにあり、Karmaにおいてもルーシーは善、マキシマスは中立、グールは悪寄りと綺麗にわかれており、単なる会話シーンでも「ああまたルーシーがspeechチャレンジに失敗した~」、「マキシマスのムーブが選択肢を適当に選んだ時の俺みたいだ」などなどプレイヤー目線特有の楽しみポイントがものすごいクオリティで束になって襲い掛かってくる。

 

シリーズ経験者からするとゲームではなくドラマ版でそこまで踏み込むのか!?と慄いてしまうような情報や展開、要素遠慮なくぶちこまれ、丁寧に調理されきっている。そしてプレイヤーに自由意志によって行動を選択させる必要のある本家Falloutシリーズとは異なり、ドラマであるということで、ゲーム版では実行が難しいストーリーテリングを恐ろしいまでに魅力的な形でやりとげている。複数の時系列、登場人物の視点が並行して語られ、やがて過去と現在が合流するのもそうだし、物語の真相を追うノームパートも完璧に貢献している。

 

特にルーシーの旅路、彼女が箱入り娘からたくましくなっていく様子は、俺が初めてFalloutをプレイした当時の感覚が重なるものがあった。そうそう、メインクエストだけじゃなくてサブクエスト(っぽい)展開でもだいぶ世界に対する感覚が変わるよね...。。

 

はやくもシーズン2製作が決定したということで、非常に楽しみである。

周囲でも高く評価されるなか、ジョナサン・ノーランを名前を聞くとウエストワールドの悪夢を思い出してしまう、とか、ドラマ版はBethesdaがObisidian製Falloutに別れを告げる葬送曲のようなものなのでは?とか、シーズン2以降に不安を覚える声もある。

俺もそんなに数を追ったわけじゃないけど、洋ドラを観ていてシーズン1/途中までおもろかったのに的な感想で終わることもそこそこあったので気持ちはわかる。

 

だが、長らくナンバリングの新作が出ていないFalloutシリーズのいちファンとしても、また2024年の大手エンタメ作品水準の高さを評価している個人としても、かすかな不安をかき消してしまう号砲のような期待がこの身に押し寄せてきていることを感じる。

 

本能に逆らわず、楽しめそうな確信があるときは楽しみにしよう!

 

If war doesn't change, men must change, and so must their symbols. Even if it is nothing at all, know what you follow, Courier...

 -Ulysses/Fallout NewVegas

 

■『暗号学園のいろは』が完結した


本作と『鵺の陰陽師』のためだけに電子版ジャンプ購読再開を検討するくらいには楽しみにしていたので、6巻巻末の完結予告におどろかされた。

 
なんてことない普通の主人公・いろはが入学したのは、暗号を解いて解いて解きまくるスパルタ学校――暗号学園!迫りくる暗号ラッシュに息も絶え絶えのいろはだったが、そこに凍という謎の人物が現れ、これまた謎の眼鏡を託す。
実はこの眼鏡にはとんでもない謎が秘められており...。

 

公式のあらすじでも暗号ものであることが強調されてはいるが、麻雀を全く知らなくても『天』や『アカギ』を真剣に読めるように、ルールが全然ピンと来なくても『ジャンケットバンク』を楽しめるように、『暗号学園のいろは』もまた、暗号が全然解読できない人間でも面白く読めるようにつくられている。主人公のいろは坂いろは、その学友達はいずれも誇り高く高潔な人物が揃っているため、やっていることが暗号を使ったバトルでも、完成度の高いキャラクター同士のやりとりを眺めているだけでおつりがきた。

作中で一番好きなシーン(このあと暗号バトル開始)

 

過去に西尾が原作をやったジャンプ漫画といえば『めだかボックス』が特に有名だろう。こちらも名作なのだが、漫画媒体の強味を活用せずにすべてを台詞で説明しているシーンが多かった印象があり、その点は悪い意味で印象に残っていた。当時は西尾もネーム慣れしていなかったのかもしれない。あれから時を経た本作では、作画担当である岩崎優次の尽力もあり、数々の展開が躍動感をもって活き活きと描かれる(ハンターハンターのパロを差し込んできたりもする)。

 

キャラ良しテンポ良しストーリー良し、暗号が読めなくてもまあ良し、ということで完結してしまった喪失感は大きいが、それでも最後はとてもあざやかな結末で〆てくれるであろうと期待している。

 

主人公のいろは坂いろは 可愛いとカッコいいを併せ持つキャラクター性がビジュアル含め完璧に描かれている

 

雑記なので好きなキャラも雑に書く

 

俺的暗号学園四天王

夕方・いろは・慕・濃姫

 

夕方は作中最強格として描写されつつ要所でコメディリリーフとしても良い味を出していたので特にお気に入り。次点は東洲斎さんとか(最初は黛冬優子を連想していたが、ちゃんとキャラが立っていて途中からそういう感覚がなくなった)。

 

 

暗号がわからなくても全く問題なく読める本作だが、キャラクター同士の掛け合いに暗号が登場することもある(上記のは回答が無かったケース)。俺はよくわからんものをよくわからんけど本質的な部分には触れてなさそうだしその後の展開で文脈的に意味をとれるからいいか!で受け流してきたが(それでよかったのか?)、こういった暗号がわからない層へのフォローがこぼれ落ちた瞬間──ひるがえって暗号の自力解読を楽しんでいる層へのサービス──が、もしかすると早期完結の一因になったのではないかと、ふと頭によぎった。

■時よ進め 汝はもどかしい

いい加減話を進めてくれないか、と思わされる漫画にも2種類。

 

完全に展開がグダグダになってしまいかつての作品の輝きを陰らせてしまっている漫画と、現在進行形で丁寧な話つくりをしていて面白いが物語の進行ペースが遅すぎてもどかしくなってしまう漫画。

 

前者は思い当たる具体例が数えきれないほどあるので、後者のなかでおそらく追っている時間が最も長いであろう作品について書く。

 

ワールドトリガー』である。

 

worldtrigger.info

 

遠征選抜試験が開始してからもう3年...

3年!?

 

ジャンプSQに移籍した今でも(休載もちょこちょこ挟むけれど)毎話うまいつかみ・・・を入れてくる非常に良質な作品なのだが、大勢いるキャラが背負うストーリーや抱えている設定を絶妙なタイミングで開示しつつ各キャラのドラマを巧みに消化していく群像劇形式となっている、週刊連載の供給ペースを活かした作風が現在の月間連載ペース(月間で1話20ページ前後)と噛み合っておらず、牛歩という印象をぬぐいがたい。

 

葦原先生の体調が最優先であることは言うまでもないけれどこのままのペースでとても物語が完結するとは予想し難く、展開を早めて次のフェイズ(遠征本番編)に向かってくれまいかと願う日々。

 

俺自身、ワートリを最初に読んだときは大長編を感じさせながらずっと味方組織内のランク戦やっていることに疑問を覚えて一度追うのをやめてしまい、その後にランク戦は傍流ではなくむしろ本流であると捉えて読み直して再評価した経緯はある。遠征選抜試験でも各キャラを掘り下げるだけでなく、二宮の口から語られる鳩原の思い出のように過去だけではなく未来の展開にもつながっていくエピソードも盛りだくさんとなっていてかなり良い。良いんだけどさあ....!

 

これは『ハイパーインフレーション』や『Thisコミュニケーション』がハイテンポのまま走り切って綺麗に完結していく様を存分に楽しんだのも関係しているかもしれない。

どのような事情があるにせよ作品は完結のビジョンが見えているに越したことはなく、

そろそろ展開を少し巻いてアフトクラトル編に移ってほしい欲望が高まりつつある。

 

『DRAGON BUSTER』も『死ぬことと見つけたり』も未完の名作だが、やはりきちんと、俺の興味が向かっているうちに完結した作品に勝るものはない。

 

 

ここまで書いて、『天冥の標』を途中で積んで何年も経過していたことを思い出した。今年中に最後まで読みます(突然の抱負)。