俗・認識のアップデート (百合・人狼)について

2か月前、こんな記事を書いた。

zumasawa.hatenablog.com



この記事のなかで挙げた3項目のアップデートについて結果をまとめておくことにした。

 

■百合

ビジュアル優先のカジュアルなものからエモさが最重視されるハードなものまで振れ幅がデカいものだがとりあえずは摂取を続けていた。とはいえまだ15作品程度だ。

 

明確にこのジャンルが意識されている作品で最も面白かったというか俺のようなセンサーを持たない人間まで引き込むパワーがあったのはリズと青い鳥

 

百合SFと称されるジャンルがあることを知り元々定期的に読んでいるSFとの組み合わせなら摂取しやすいんじゃないかしらと2019年度のベストSF国内篇一位である「なめらかな世界とその敵」にも手を出した。『シンギュラリティ・ソヴィエト』は抜けて面白かったが、もっとも百合的な要素を連想させ期待していた表題作は乗覚という設定がファジーに万能すぎてイメージがぼやけたままになってしまっていたのもあり、架橋の決断をあまり楽しむことができなかった。

 

しかしながらまだ2か月ということで、どこまでいっても俺の中では百合とかBLとかブロマンスとかロマンシス(シスマンス?)とか...全部「人と人」でいいのでは?という認識に変化は無い(ガ・・・ガイアッッ)。漠然としている風景の解像度ではなく、画素数だけが若干向上したような感覚。解像度=密度の向上には至っていない。

 

そもそも俺はシャニマスで百合っぽい空気が流れてもそれに乗り切ることができずまあ人と人。で流してきた人間だし、SSSS.GRIDMANの「それ以外に生まれてきた意味なんていらないよ」にガチ萎えしていたので適正は言うまでもない。本気でこのジャンルを愛している人を怒らせるようなことがないよう気を付けるしかない。

 

出発点となった、エモさを最重視するハード寄りオタクのいう「これは百合」についても勿論理解が及んでいない。長期的に向き合って初めて文脈を共有できるようになる類のものだろうが...。引き続き積極的にずっと摂取していくエネルギーも空き時間も無いが、今後はこれ系で評判の作品が気になったら手に取ってみるくらいの距離感で行くことにする。いつか"百合"にぶん殴られるような体験ができたらいいなとは考えている。

 

人狼

オリジン版は無理なことを既に悟っていたので、among usだったり雪山だったりとにかく"遊び"の幅が広いライクゲーをpremadeで囲んでいただいたり野良で外国人とhappyにプレイしたりなど。下手くそなのはそうだが、プレイ中俺は労働をしているのか?と錯覚してしまう点は変わらず。適正0どころかマイナスだったのかもしれない。

 

正直なところ、このゲームにおいて不文律とされているもの(定石)の支配度の強固さを再確認したような心持ちだ。人狼系と称されるジャンルを好んでいる方にかわいそうなものをみる目で見られて然るべきレベル以上にはなれなかった。

 

先人プレイヤー達が開拓した道筋に沿って歩くことを求められること自体はどの対戦ゲームも同じだが、一般的に対戦ゲーでは定石破りの展開が起こったとき、実行したプレイヤーに考えがあってもなくても思わぬ結果を引き出す場合がある。lolなら視界なしでバロン始めたけど特に損害なくとれちゃったとか、マキオンならF覚格闘機体に無根拠で生覚振ったらなんか当たったから覚醒を無駄うちにできた、みたいなやつだ。

 

だが人狼では定石を外れた時点でゲームから除外されてしまう印象がある(雪山のようなカジュアル寄りであれば除外された後も凶悪な殺人鬼としてロールプレイすることは可能だがそれはあくまで最悪の場合の展開であって、最初からそのようにしていては人狼系に組み込まれるゲームをわざわざ選んだ意義が薄くなってしまう)。

 

正解行動をとらなかった、あるいはとれなかったプレイヤーから消えていくゲームなので当然他人に対して積極的にそれを指摘することが求められるわけで、この厳戒な状況下で生まれる駆け引きの揺らぎが醍醐味なのかもしれない。

 

ただ俺の場合は、上述した定石を外れた者が除外される宿命にあることと、少なくとも今はゲームの構造に要請されて他人に対してミスetcを指摘する流れを楽しめない心理状態にある、という2点が人狼系と称されるゲームをプレイする上で引っかかってしまうらしい。

 

楽しめるようにはならないかもしれないが、苦手な理由は把握できた。

今後対人でやることはないが、Switchで『グノーシア』は触る予定。

 

 

VTuber

マジで書くことがなんもない。

 

切り抜きを少々つまむまでが俺の興味の限界だと思い知らされた。

この先も配信アーカイブ一本完走まで至ることは無い気がする。

 

 

 

シャニマス 海へ出るつもりじゃなかったし 感想

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まあまあ良かった。と書くとなんだか以前書いた天塵の感想と大分温度差がありそうなニュアンスになってしまうかも。本コミュでは中盤まで風のない緩やかで少し退屈な日常が丁寧に描写され続け、わかりやすいドラマティックさは抑制されている。俺はわりと満足な内容でした。

 

天塵でシャニPはいかにして彼女たちの美しさを伝えていくかという課題を背負っていた。本イベントで彼は芸能界と幼馴染達の世界との橋渡し役を請け負っている。数カ月経過しても相変わらずルーズな問題児集団に対しできる限り彼女たちらしさを尊重しながら仕事を探す。明るい部屋コミュから引き続き、仕事としてアイドルをやってもらう上での説教も行い、それと同時に彼女たちにどうなりたいか自分で考えてみて欲しいと伝えている。もうプロデューサーというより教師みたいだ。

 

ノクチルがゆるいスタンスをとっていることはこれまでも描写されてきた。プロデュース開始からおそらく作中で数カ月経過してなお仕事の連絡を小糸以外既読スルーした(浅倉は寝ぼけていた)のは年末だったし個人的にも似たような経験があるので飲み込める。しかし浅倉と樋口がコンビニ寄ってミーティングに遅刻するくだりまでくると、シャニPの彼女たちへの向き合い方の一面を強調するために過剰に盛り付けられた展開のように感じてしまった。今振り返っても引っかかる。これは俺がpコミュや感謝祭時点の彼女たちを念頭に置いているのがよくないのかもしれないが...。プロデュース開始から少なくとも数か月は経過してるわけでこういう遅刻は初めてではなく以前にもあったはずだし、シャニPの性格的にはその過去の時点でマジレスしているほうが自然で、そして浅倉も樋口も言われたことはきちんと守るタイプ(作戦会議へ向かう途中にちゃんと連絡を入れる浅倉のシーンもある)。と思っているのだが、俺が解釈を間違えているだけかも。

 

シャニPが条件として優勝を提示した本当の意図はすぐに察せられるものになっている(記者がわかりやすく言語化までしてくれるフォローつき!)。普段のシャニPなら何故その条件をつけたのかも細かく補足説明しそうだが、そもそもノクチルは普段のやり方が通用しない集団なので(正面から言うだけで素直に全てを受け入れてもらえるなら彼もここまで苦労してないだろう)、彼なりの工夫で変化球を投げたと解釈している。もちろんただぶん投げるだけではなくて、「見えてるものが変わるって思う」と付け加えているのがツボをおさえている。浅倉(というか、たぶん樋口以外)のモチベは確かに引き上げられた。

 

彼女達がノクチルとしてひとつの目標に向かって懸命に取り組み、昔浅倉が読んだ小説と重なって綺麗めに物語が〆。あくまでもアイドルとしてどうこうではなく、彼女達自身が認識をアップデートさせ、それによってアイドルとしての活動の場の意識にも変化が生じていく、かもしれない──くらいの温度感。アイマスシリーズ的な文脈からの要請を巧みにいなすようなやり方のバランス感覚の良さは健在(いい加減くどいし、それ自体に価値があるみたいなカンジになるとズレてしまうのでこういう言い方はこれっきりにする)。隠喩っぽい要素が多々ちりばめられていたり、小糸が葛藤していたりするがわざわざここに羅列していく必要性を感じないくらいに内容がまとめられていた。

 

要約してしまうと筋書きとしてはシンプルだが、これまでsSSR浅倉の2つのコミュを挫折、妥協、諦念の物語として読んできた自分には、とうとう風を感じ始めて楽しそうにしている浅倉を拝めたのはかなり良かった(後日談「かんぱい」まで含め)。浅倉は天塵では一切モノローグが無かったが、まさかここまでマシマシにしてくるとは。

 

 

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完璧なタイミングに(みんなで)跳べば、(きっと)「ほんとの世界になる」。

浅倉ワールド全開。最高

 

 

今はただ、次はどのような物語が描かれるのかに興味が膨らむばかりだ。ノクチルは天塵でいつか約束した海にたどりつき、本コミュでは帆走を開始した。この流れ自体は非常に好ましい。いつもの悪癖で次の展開に進展や真新しさがすくなかったらなどと杞憂へと回帰しそうになったが、もう2021年だし、いい加減勝手につまらない未来を想像するのは楽しみをみずから目減りさせるだけだと戒めておく。

 

今後ユニットイベをやる上では、感謝祭時点でも変化を拒んでいるように見える樋口のアイドル意識がどう扱われるのかも気にかかっている。GRADでそこらへん整理して、次回イベの時系列はGRAD後とかだといいなあなどと妄想して期待を膨らませておこう。

 

 あとここ好き

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晦日ジャンプの時点では(きっと)「ほんとの世界になる」だったのが、目標に向かって邁進してる瞬間に風を感じて(もしかすると)「本当の世界になる」に変化している。シンプルに良い。本当の世界の景色そのものは見えなかったけどその景色が存在すること自体を期待できるようになってる塩梅がな~~~~~~~いいんだよな~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

シャニマス 【pooool】浅倉透の感想

 

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良かった。同じくsSSRの「ハウ・アー・UFO」コミュ既読が前提な気もする。

 

浅倉コミュでは空の上に特別なものが見いだされる傾向がある。WING編はてっぺんへとのぼっていくことを決意する物語だったし、浅倉は【10個、光】では星を探すことを決意し、【ハウ・アー・UFO】ではUFO(または人工衛星)を求め、今回の【pooool】では月に想いを馳せる...と思いきや。

 

"UFO"と明確に違うのは、浅倉の中の物語が突然始まり、誰にも共有されないまま変質し、空の上へ問いかけることもなく、地上への着地で終わる点だ。月まで行こうとした浅倉の想いは誰にも伝えらないまま水のないプールへと行先が変わる。これを特別なことを目指す挫折と取るのか、違う特別を選択しただけだと取るのかは解釈がわかれるところだとおもう。

 

 

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2コミュ目「虫たちの夜」雛菜との会話はかなり大きい。浅倉が語る小説の中には月の描写が登場しないのだが、雛菜はいい感じの夜という要素から月を連想していた。

 

この概念の登場によって、浅倉達が水のないプールで過ごした何気ないひと時が、「(いい感じの夜に)月の下でざわざわしていた」と要約されることになる。筋書きから、作中小説内でざわざわしていた虫たちが幼馴染達と重なっている、かもしれない。断言できないのが浅倉コミュの魅力だ。

 

恐らくロマンに対して客観的な事実を認識してしまったこの時点で、あの夜抱いた月へ行きたいという想いに迷いが生じている。泳ぎたいと願った水の張られた空に近づくことはできず、水のないプールに落ちてきた月に見立てた偽物を蹴り飛ばしただけで、「ね、月」という語りかけも月からすれば虫の鳴き声と変わらないのかもしれない。

 

このあと、教室の窓からはあの日確かに足を運んだプールが見えることに気付く。クラスメート達の手によって窓は金モールで装飾され、それを通じて眺めることで金ぴかのプール像が完成する。安っぽい人工物だが金ぴかは金ぴかだし、浅倉のリアクション的にそれなりにいい感じではあるようだ。

 

ここまでなら水のないプール、地に足のついた現実的な何かも悪くはないよね~という着地ができるんだがこのゲームはシャニマス

 

3つ目のコミュ「プール・フール」では浅倉がいまだに迷いを抱いていることが突き付けられる。

 

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浅倉は漢字の読みクイズになんとなく連想した言葉で脊髄反射のようにして「玉虫色」と回答し、12月はざわざわしていていろんなとこでいろんなことをやっている・・・はずなのだが、『色んなとこでおんなじことをやっている』と思考する。

 

次に特別な領域、対象である月を思い、その直後に現実的に足が届く水のないプールを思う。

 

浅倉はプールを選択する。ざわざわしてるけど静かで、月が当たっていい感じになれる場所だ。おんなじ番組ばっかで退屈だね~という会話をしていたところで「プール行きたいわー」と言ったのは単純に思考が口からもれたのか、これから行きたいという提案なのかについては、樋口が「眠い。寒い」と即答していることから後者の可能性もある。雛菜は前者の解釈で「楽しかったよね」と返す。小糸はもうああいうのはだめだと拒否する。

 

幼馴染達の反応を見て浅倉は微笑む。月まで行ったり空に張られた水で泳ぐことはできなくても日常の中に非日常を見出すことはできる。プールもええやん。という〆になりかけるが、浅倉は一瞬だけ哀しい表情をして、「プール、行きたいわー」と内心で繰り返してコミュは終わりを迎える。

 

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浅倉は幼馴染達との穏やかな波のない日常をなんだかんだ楽しんでいるから、自分の視点から勝手に閉塞感ありそうとか退屈から抜け出せ無さそうとか捉えるのは失礼かな~と思っていたのだが、明らかに毛色がちがう。月と自分の隔たりを実感し、幼馴染達と過ごす時間そのものに希望を見出したのであればプールそのものには固執しないように思える。いい感じの夜、いい感じのとこへ辿り着けないことがもどかしいようにも見える。静かに妥協と挫折が描かれているようにも感じる。

 

また(みんなで)プールに行きたいと語るが、誰もまた行こうとは返さない(樋口・小糸は拒否している)。月を諦めて幼馴染たちとプールを目指そうとした浅倉だが、その妥協案すらも却下されてしまう姿は非常に切ない。最後の表情はそれを表しているように感じた。

 

タイトルに愚者が入っているのも無関係ではないだろう。

【pooool】というカード名はコミュ名にもそのままあるように、pool foolを略したものなのだろう。

 

別に幼馴染達が縛りになっている...というわけではなく、何も考えなくても全てを合わせてくれる程都合のいい存在ではないという事実を示しているにすぎない印象(「大体合ってるから、うちら」と感謝祭で語っていたし)。この点はイベントコミュとかで変化していく部分かもしれない。今回も小糸だけがアイドルとして自分たちをテレビの向こうに見出していたし。

 

pコミュでは特別な存在と接している時の浅倉、sコミュでは日常を過ごしている時の浅倉が描かれる方向になるのかまだ断定はできない。今後の浅倉コミュがどういう方向性になるのか気になるのでとにかく追っていきたい。石がぎりぎり枯渇しないペースでお願いしたい。天井なしだけは勘弁してほしい。

 

 

 

 

 

ああああ~~~~切ねえ~~~~~~

浅倉って豊かな感性ゆえにこういう人が知る由もない内心の挫折や妥協を密かに繰り返しているのかもしれないなーってWINGや"UFO"コミュを眺めて感じていたのだけれど、今回そういう輪郭が明確になったような気がする。浅倉という個の在り方を勝手に決めつけることはできないけれど、そう仮定するとWINGでシャニPにあの時の人を見出した後に噛み合わなくてあれってなってしまって、また特別を諦めて向き合って、その矢先に本当の特別だったことを再認識するという流れが浅倉にとっていかに劇的な体験だったのか、シャニPと2人のときの浅倉がなぜここまでテンション高いのか理解度が深まったような気もする。sで曇らせた分pで笑顔にさせてくれ。