五等分の花嫁終盤について

2年以上リアルタイムで読み続けてきた五等分の花嫁が完結し、10日ほど前に最終巻が刊行された。

 

五等分では、男主人公である風太郎は姉妹たち個人の課題解決には手助けできるが、姉妹間のやりとりに関しては機能しない(『7つのさよなら』で風太郎はそれを自覚する)。全てを男主人公が解決してしまうとアレなので、この匙加減はバランスがいいなあと感じていた。

 

その点がもどかしさに繋がることもあった。シスターズウォーでは一花の暴走によって姉妹間の空気が破壊されたが、五つ子は風太郎にはそれを伏せていたので風太郎は解決に関与しない。そもそも火種そのものが風太郎への五つ子の好意なんだけど、これまで姉妹達の課題(勉強、夢etc)解決を面倒見てきた風太郎そのものが姉妹達にとっての直面するべき課題と化した為、彼の描写は減り、姉妹達が思い悩んで行動することがページの多くを占めていく

 

最初は風太郎を通して姉妹を見ていた構図が気が付くと逆転しているのは、花嫁の正体を探らせるような作品構造に起因しているものと思われる。五つ子は途中から女主人公としても違和感のないような描写になっていく。風太郎は男主人公であり、同時に姉妹達にとってのヒロインでもあるという立ち位置に替わる。

 

作者は姉妹たち全員をポジティブに描くことで、花嫁にならなかった場合にそのキャラクター的な地位が貶められないように、あるいはそのダメージを最低限にするべく、かなり博愛的な展開で場を穏やかにする方針をとった。俗ないいかたをすると『負けヒロイン』扱いされるキャラクターを出さないように心がけていた。

 

しかしながら、おそらくはその方針が災いして文化祭後の物語が味気ないものになってしまったように思う。ようやく結ばれた風太郎と四葉のほほえましいやりとりは省略され、予定調和的に姉妹間の連帯が主題となってしまい、四葉派の俺にとってはかなり物足りなかった(四葉としてのタメ口解禁もスキップされ結果だけが残った)。他の姉妹を好きなファンにとっても、自分の好きなヒロインが風太郎に選ばれなかったという点がネックになり、告白以降の物語を他人事のように流していたのではないだろうか。作中内の登場人物たちはその過程を自ら選び、納得し、平穏なエンディングへと至ってはいるが、読者なのでワガママな感情が出てしまう。

 

読者特有の欲目で暴論を続けると、姉妹同士で覚悟を完了させたうえであの告白方式を決定していながら告白後にまたギスギスを描くのは蛇足に感じた。感情の落としどころを必要としていたニ乃と五月を決着前にもう少しうまくさばけていれば...などと思ってしまう(一花、三玖は既に脈がないことを悟っていた)。

 

好きな作品だけに不満も出てしまったが、中野四葉のキャラクターはかなりブッ刺さったし他の姉妹にもちょいちょい刺されるしで大変幸福な時間を過ごすことができたことは記しておきたい。おそらく風太郎が好意を自覚していなかったであろうあの72話、姉妹以外には常に敬語で話す四葉が級友の邪推をタメ口で「ないよ」と遮るあのシーンは特にお気に入りです。