
鑑賞後にじわじわ好感度が上がっていく珍しいタイプの体験が久々にできた!この種の味わいは『ランガスタラム』以来かも。ジャンルは全然違うけど。
めちゃくちゃ道徳的でまっすぐなストーリーが美麗アニメーションと共に進行していく、隅々まで描写が丹念な高品質ファミリー映画の趣を醸し出しつつ、不穏な戦争描写と外連味あふれるアクション描写が挟まってガチャガチャしているし、物語も爽やかさの裏で着実に湿っている部分もしっかりあって、このガチャガチャ具合がユニークだった。
魂に中野四葉が刻まれているオタクとしては、フジコに注視していた。「それでも!」「えっ」のくだりで核心を持って、冒頭のやりとりとか引っ越しに繋がる騒動らへんの描写を思い返してああ~~~そういう感じのやつね~~~~とじわじわ関心を持っていかれた。
月、消えた妖精さん、サブリミナルのひょうに表示される絵画の数々...。千鶴サイドが天才熱血ストーリーで突き進んでいくようになる前からフジコの心理が伺えるような描写がどんどん露骨になっていってて、今日は元気だし妖精は見えなくなるし家父長制~~~な日本の実家を飛び出したのに結局滅私奉公する母のような立ち位置に縮こまってしまったフジコ、彼女のほの暗い感情が臨界をむかえるときどう決着をつけるのかが気になりながらスクリーンを見つめていた。もしフジコが千鶴に対して正面から心境をそのまま絶叫してきたら何もかもおしまいだし映画館出てもいいなとすら思っていたが、言葉ではなく音楽から入って柔らかくフジコをフォローするルスランと、無言で音楽を聴くフジコの姿を映し出す手管は御見事。
若林が実は狸の置物に金を隠していたオチ、両親を説き伏せてパリに連れてきてくれたまではいいけど保護者失格すぎるだろうというツッコミへのフォローにもなると同時に価値あるものが誰にも見えないところに眠っている暗喩にもなりうるのが非常にスマートでいい 本作はこういう描写をうまぶらず、わかりやすくサラッとやってくれるのがかなり好感度高い。
満を持してのスタッフロール/流れ出す『風に乗る』/映し出されるフジコの絵/最強のタイトル回収...エンディングの静かな疾走感も爽やかでよござんした。
トータル観に行って良かったと思えた映画。
俺が劇場版スタァライトを観に行く(ためだけにTV版スタァライトも完走した)きっかけになった絵師がプッシュするだけあるな...流石劇場版スタ(略)絵師。本作もその絵師がプッシュしているのきっかけで興味を持った。
あとは雑な感想の断片
・バリバリの差別主義者っぽいふるまいのギャルソンも、よくよく見ていると他の裏方従業員も食い扶持に困っていそうな人々が働いているのがわかるし、オペラ座や絵画を店に出してくれるしでやっぱりジャンヌさんの人脈なんだよな~~と納得。
・お母さまが出てくると作品のジャンル変わるなあとは思ったけど、最後の謎包囲網はなんなんだ。いきなり劇場版機動戦艦ナデシコの墓場みたいな空気になって笑ってしまった。でも劇場のまわりの人から声出して笑うような気配が無かったのでなんとか無声で耐えた。
・矢島さんは家父長制~~~な姑としての立ち位置かと思ったら割と真っ当なことしか言わないしダダ甘なのいいね わかりやすい叩き棒が実は全然いない、花の都巴里
・12年ほど前にパリを訪れてフランスゲーマー宅で何日も寝泊まりしたことがあるのだけれど、ちょこちょこ見覚えのある風景に似た道が出てきたりしてもしかしてここ俺通ったことある?と思い出補正でテンションが上がる経験があって嬉しかった。旅行はし得。
・俺はもう世界史の知識が朧げになっているのでうわあとうとう戦火がフランスまで来たか!?→イギリスがやられましたを何度も繰り返された。イギリスが最強のデコイみたいになってた。
・ラストのオペラ座バレエシーン、ダンス作画をガン見していたら街の風景とかに視点が飛んでいって戸惑っていたが千鶴が参加する第二幕が始まる瞬間の画風の変化(端的に言うと違和感のあるほうの3D)や、素人鑑賞者としてクライマックスの美を感じられる前に先にフジコの妖精さんが目覚めてしまってちょっと残念。過程の練習風景の動作が美しかっただけに、本番はもっと長い尺で観たかった。
・フジコと千鶴がどちらも舞台演劇っぽい?発声なのがちょっと気になったかもしれない そういうディレクションだったのかな?
・俺の観たバージョンだけなのか定かではないけれど、本編開始前にコラボレーションMVがフルで流れるのはやめてほしかった 普通にオープニングかと思ってたらガンガンに本編映像と思わしきものが流れるので結局プロローグ開始のころ合いまで顔を伏せていたし、風に乗るのはスタッフロールが始まるあのタイミングを初回にしたかったぜ...