Gのレコンギスタ 感想

かなり面白かった。

 

群像劇としての趣が強く、一話ごとの情報量がかなり濃密なので気を抜くと置いて行かれる(特に宇宙戦が始まって以降はさらに複雑化していく)。そのカロリーを求められる感覚がたまらなかった。

 

個々人が信念を持ち、それぞれの思いを抱いて行動しているので、「お前なんでそっち側にいるの?」「なんでそういうことするの?」という点が出てきても理解できるように意識しておく必要がある。

 

特定の人物が作品としての結論や気持ちの着地点を打ち出すのではなく、個々人が自分にとっての目標に向かってあがき続けている(マスクもクンパも)。その中でベルリやアイーダのような子供たちは、自分にとっての指針をもとに何を目標にすればいいのかを模索し続けていて、アイーダは目標を見つけるがベルリはまだその途中という状態で物語は終わる。

 

想定している物語のボリュームに対して尺がギリギリなのをどう解決するか?という問題に対し、重要だけど予定調和的なイベントは幕間で済ませる、ベルリの心境がアバンや次回予告で語らせる手法でクリアしているのは物凄いことだと思う。とはいえ視聴のハードルが上がっているのは否めないし、特にロボットアニメっぽい戦闘のカタルシスを求める人が早々にドロップアウトしたのは想像に難くない。ただ、1週目から設定とかの前情報を入れて視聴するなどで十分カバーしつつ楽しむことは可能だろう(俺は視聴していて理解しきれない部分が出てきたらいったん自分でじっくり考えてみて、それでもわからなかったら感想記事を漁りながら自分なりの解釈を固めるスタンスで視聴を進めた)。

 

群像劇なので(強調)、下手にGレコの感想を述べると全キャラについて書くことになりそうなため3キャラだけ選んで感想書く。

 

■ベルリ

彼の行動には様々な動機が考えられる。

アイーダへの想い

・義母への負い目と責任

・キャピタルタワー守護者(ガード)としての矜持

・スコード信者としての敬意

・反射的にその時の状況に適したふるまいをしてしまう性質と能力

その他も当てはまるように見え、いずれか一つに絞るのは難しそうだ。

 

特に状況に適した行動をできてしまうのが彼の長所と短所が同居するところで、

レイハントンショック(適当につけた仮称)以降は弟としてアイーダを支えようとする一方で、自分の戦争を回避したいという考えとGセルフに込められた願いが重なり、その高性能さを生かさなければならないという義務感に駆られて奔走する。

 

でもGレコは群像劇であってヒーローものではなかった。ベルリがどれだけ苦心しても戦いの光に惹かれて目の前で新兵が、ユグドラシルをきっちり殺しきることができなかった結果グシオン達が死んでいったし、ギアナ高地でもマスクの邪魔が入ってフォトンサーチャーによる事態収束は成功していない。

 

序盤での「返せる借りじゃないけど、返す努力はする」という言葉は彼の信念そのものであり、ただのポーズではなく本当の結果を出すべく必死である。最終決戦で自身に対して本気の殺意を向けてくる複数の敵機を非殺でやりすごしてみせた事実がその証左になる。

 

その一方でアメリア艦隊の本質を感応能力で見抜き、更なる戦争被害拡大防止のために艦の殺害を結構するラライアとノレド、その行動を称賛するアイーダという図式もこれまた興味深い。Gレコは群像劇であり、個々人が信念に基づいて行動しているため主人公が気持ちのいい結論を出してそこでみんなが連帯するという展開にはならない。これがGレコの面白さだろう。

 

周囲の状況に合わせて生きてきた彼が自分の意思でメガファウナを降りて旅に出るのも、結論は出ないかもしれないが結論を出す努力をするという彼のポーズ抜きの決意が溢れていて、俺にはとても眩しいものだった。

 

アイーダ

物語前半でポンコツさを見せつけていたものの、精神的な成長はすさまじい。大人たちのしょーもない政争を見た直後はトワサンガに行こうと言い出し、ベルリのカーヒル殺しを許し、クレッセント・シップでは自分が誰かの教えに迎合しているだけだったのではないかという意識に目覚め、ビーナス・グロゥブムタチオンの真実を知った直後は、まだ自身の肉体が健康であることを確信し、父親が亡くなった後は自分の意思でその名前を利用し、人命を尊重するタフさを見せつける。

 

富野監督のインタビューによるとGレコは女王誕生の物語としても視聴できるそうだが、然りと言ったところ。

 

■バララ

24話視聴してバララ好きにならんやついるか?俺は一番好きなキャラになりました。

 

Gレコ前半は群像劇部分がかなり面白いのにMS戦は地味だなあと思っていたのだが宇宙戦が始まってからはどんどんいい感じになり、完全に興が乗ったのが24話だったと思う。

 

マニィを認めて大尉にゆずるバララは、確実に死を覚悟している。敵に回す数があまりにも多すぎるし、その中にはパイロット・機体共に作中最強のGセルフも含まれているわけだから当然だろう。そんな状況で

 

「あの小娘を殴りとばしてマスクに嫌われるのも嫌だが...何もできない女だと思われるのはもっと嫌だ!」


ユグドラシル、あたしの運勢を占え!」

と言ってのけるバララあまりにもカッコ良くないか?名状しがたい清々しさを備えている...。

 

 

劇場版も見ます。天才のジャベリンありがとねぇ!がカットされていると聞いて、それだけが残念な前情報。