ライフイズストレンジ2 感想

全ての選択肢に緊張があり、前作以上にかなり楽しめた。

 

ゲームの性質が性質なので、1・2共にクリアしてない人のことは考慮せずに書きます。

 

 

■超能力の代償

ライフイズストレンジ1ではマックスが時間を巻き戻したり写真で切り取られた時間に飛ぶことで世界を自分にとって好ましい方向に変化させようと試みていた。

 

昔の親友の救済や殺人事件の解決などの大義名分はあるが、エゴで世界を振り回したことに対して残酷な選択をつきつけられるのは道理に適っていて好き(マックスもそれを自覚していて悪夢を見たりするし)。

 

しかしライフイズストレンジ2では、超能力の代償として大災害は発生しない(せいぜいダニエルが体力を消耗する程度)。そのかわりエピソード4までダニエルは自身の超能力を制御することができず、プロローグで暴発して大惨事を起こす。また、逃亡後の生活においても使用すること自体に社会的なリスクが伴っている。これが今作における超能力の代償になっている。しかしながらほとんどの社会的な負担はショーンが兄として受け持っているし、全ての非をショーンが被るエンディングも用意されている。この点からダニエルにヘイトが向けられがちなようなのだが、状況を振り返ると彼以外にも落ち度はあることは多い。

 

プロローグにおいてもそれは同じ。

 

ダニエル

→ハウスルールを無視して兄の部屋に突入して無視され、むくれて血のりを持って外出。悪質な隣人にぶつかってしまいトラブルを起こす。

 

悪質な隣人

→人間のクズ。なんかの病気らしい(うろ覚え)。以前からショーン達を挑発していた。ダニエルを許すこともなく、ショーンに喧嘩を売る。

 

ショーン

→弟をガン無視、隣人とのトラブルを本格化させ(俺のデータでは殴り倒した)、

更にダニエルの能力が暴発した後はパニック状態になり弟を騙して逃亡。

 

警官

→(おそらく)移民系アメリカ人への先入観と、血のりをつけて倒れている隣人を目にしたことから凶悪犯罪の可能性が高いと見て警戒心を最大にした結果、父親を射殺してしまい、ダニエルの能力暴発を受けて死亡。

 

父親

→場をなだめるつもりで、銃を握って警戒しまくってる警官に不用意に近づいてしまう。

 

落ち度がダニエルだけに集中せず全員に分散するようにしているというのはどこかのメディアの発売後インタビューで開発者からも明言されていた。とはいえエピソード3~4間で、ダニエルの立ち回りがが)ヒドいので、それがダニエルにヘイトが向けられがちな要因である気もする。

 

今作では、超能力の存在そのものはあくまでも単なる味付けにすぎないと捉えられる。

 

■選択の重さ

無能力者のショーンは未来や世界に影響を与えることができない。しかし弟の人格形成には深く関わってくる。

 

俺はエピソード2をクリアした後に分岐一覧を見てこんな展開まで用意されているのかと戦慄したが、同じ感想を抱いた人は多いのではないか。

 

選択はゲーム的な正解不正解ではなく、何がショーンとダニエルにとって良いのか?が基準になるような状況が多く、とても好みだった。選択が重いだけに、ショーンがダニエルに向ける愛情や父親との回想シーンがしみこむようになってくる。

 

■デイヴィッド

開発者インタビューによれば、1のエンディングでどちらを選択しても生存していた主要キャラクターという理由から抜擢されたそうだが、俺はトレーラーでクロエの写真を見るまであのデイヴィッドだとは全く気付かなかった(ワイルドになりすぎ)。

 

俺はアルカディア・ベイを救う方を選んでいたので冒頭の選択もそうしたけれど、どうやらクロエルート選択後の現在のマックスとクロエの様子を確認することもできるらしい。嬉しいサプライズ。

 

■社会的な政治メッセージについて

 

IGN JAPANのレビューではこれこそがメインテーマ、政治的メッセージが薄めなのが残念という論調だったが、俺は自ら望んだわけでもないのに追い詰められた個々人の選択と葛藤を描くことがコアだろうと認識して進めていたので、政治的な背景に関しては作中世界の緊張感を担保する為に付随しているものにすぎず、メインテーマ足り得てはいない/そのように扱われていないと解釈している。これは俺がのんきな日本人だからなのかもしれない。

 

■残念だった点

 ・登場人物の善悪がハッキリしすぎ

前作では各キャラクターが中庸に描写されていて、他人を傷つけてしまうけど悪意は無くてただ馬鹿なだけだったり、良いやつっぽいオタクだけど少しキモかったり、アウトローだけど愛犬家だったり、いじめっ子だけど根は悪くなくて違う時空では仲良しだったり...とバランス感覚が優れていたように思う。

 

2ではそのバランス感覚はほとんど失われ、善玉と悪玉がはっきりと区分されている。一人の人物に両義性を与えるのではなく、善玉と悪玉を同時に、あるいは連続して登場させることでバランスをとろうとしている(ガソリンスタンドの夫婦、私有地で襲ってきたチンピラと気弱な善人等)。それでも1週目は終始出合う人間を警戒していたが、今振り返ってみるとフィンやキャプテン・スピリット父はむしろ今作では例外的な存在で、ほとんどの人物像は善玉と悪玉でハッキリ分かれてしまっていた。

 

・エピソード4

塩だった。病院からの脱出がご都合すぎるのはまだいいとして、3で小規模な災害を起こしたダニエルがテンパッてキャンプに戻っちゃうし、ジェイコブが自分が逃げ出してきたカルト寄り家族のもとで彼を保護し始めるし、なんかそれではねっかえりだったダニエルがあっさりと洗脳されているし...。カルト側にまともさが残っていたら寄りを戻す展開に説得力が出ないので救いようのないヴィランが出てきたわけだが、エピソード3までの世界が持っていた強度が崩壊して、兄弟の和解、そして親子の和解をドラマティックに描くための舞台としか思えなかった。

 

ショーンが私有地でチンピラに暴力をふるわれて泣き叫びながら車を走らせるシーンだけは、安息なき世界という雰囲気が強くてかなり好き。

 

■自分のエンディング

最後の選択について、直前のショーンの発言から自首ルートの正史っぽさが高すぎないか?というコメントを見かけた。あの発言は選択内容によって変わったりはしないんだろうか。

 

個人的には状況に追い込まれて悪意なく災害を起こし、また逃亡生活の中で犯罪を行った自分たちの責をとることよりも、自由を求めて国境を突破することを『正しい』と判断するかどうかもプレイヤーにゆだねられていると解釈することも可能だと考えている。

 

とはいえこの選択は本当に迷った。ここで自首するくらいならもっと早くやっとるわとも思うし、ショーンはともかくスペインで兄弟達が幸福を得る確証も無い。国境を突破する過程でダニエルが人を殺めるかもしれないという懸念もあった。俺のたどったルートでは不殺だった。俺もショーンと同様の姿勢をとってリアルに悩んでいた。

 

思い出したのは、直前の脱獄シーンでダニエルが「この力はもう人に向けたくなかったのに」と言っていたこと(ここもダニエルの社会規範意識で変わりそう)。自首を選び、15年後にはライラが迎えに来た。

 

このエンディングはショーンの救いが無さ過ぎるのでは?と頭によぎりもしたが、兄でありそしてまた父代わりとしても接してきたダニエルがたくましく成長し、おそらくはその報告をキャンプでしてくれたであろうシーン、そしてその直後に道を別れていき、別れ際にダニエルが昔のように狼の遠吠えをするシーンがあまりにも最高すぎたので俺のエンディングはこれで間違っていなかった。