2020年後半~2020年1月 印象に残った曲の記録

■(アルバム) 渦になる / きのこ帝国 

2020年9月に聴いてハマッた。

全ての気力を失って真っ暗な部屋でベッドに横になりながらiphoneを操作していたとき、ふと知人がこのアーティストについて言及していたのを思い出してapple musicを通して聴いたのだ。

 

恐らくその初めて聴いた時の個人的なコンディションがばっちり噛み合ったのだろうが、凄まじく心を揺さぶられながらしかし穏やかなままというものすごい体験を味わうことになった。濁った湖の底に静かに寝そべっているような恍惚とした感覚。

 

1曲目『Wheel Pool』で意識を持っていかれ、続く『退屈しのぎ』の激しく暗鬱な8分間の味わいたるや。

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普段だったらこの尺の曲はフルで聴くこともなくさっさとスキップしていただろうから本当に運が良かった。

 

最初から最後まで隙が無い構成だが、個人的にぶち抜けてるのは

『Girl meets Number Girl』。

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個人的には浅倉透前日譚テーマソングまである(唐突なシャニマスネタ)。

 

あなたがいれば/みんながいれば大丈夫みたいな歌が苦手だ。自らの未熟さが自分自身に最も大きなダメージを与えることが多いのもあるし、自分の苦しみは可能な限り自分の内側で処理するのが望ましいという感情がある。

 

このアルバム『渦になる』では、他者から救いや許しを与えられることもなく煮えたぎる鉛のような情念を抱え込んだまま生きる存在が、その存在が過ぎ去った過去に見出す憧憬や後悔が蓄積され渦になっている様が描かれている。『夜が明けたら』では明確な解決策もないまま、泣きながら未来を迎えている始末だ。他の何にも拠って立たず、ただ己の足だけで立っている、なぜなら自分の責任によって何にも拠りかかれずそうするしかなくなったから、といういい感じな突き放し方。好みの方向性。

 

『渦になる』と巡り合い、俺史上至高アーティストに並ぶ存在来たか!?と大急ぎで2枚目以降のアルバムも聴いていったが、作風はアルバムごとに緩やかに変化しており、好みの曲は1アルバムに1~2曲くらいの配分になった。今はメンバーのひとりが家業を継いで活動休止になり、Voはインスタに映え写真をアップしたりなどしているらしい。初期だからこその爆発力だったのかもしれない。それでもオールタイムベストクラスで気に入った。

 

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2ndアルバム『Eureka』ではこの曲がイケてた。

歌詞「深海のね(中略)~生きていけないの」部分だけはいささか自己陶酔が過ぎるように感じて毎度引っかかってしまうのだが、それでもかなり好き。

 

■(アルバム) HOMELAND 11 blues / Tacica

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アルバムを通してリスナーの理想追及、葛藤の克服を後押ししたい想いが伝わってくる(ような気がしている)。その点ではダニエル・ジョンストンをモチーフにしたという収録曲『DAN』が特に激しく、お前の衝動を掻き立ててやるぜ~という力強い波動を感じる。

 

歌詞はやや難解な部類で、くだけた感じがないGRAPEVINEという第一印象(あんまりこういうたとえはよくないよなあ)。まだ他のアルバムを十分聞けていないので聞き込んでいきたいアーティスト。

 

個人的に抜けて良かったのは『Co.star』と『from the gekko』。

 

■(アルバム)Vesseles / Starset

このアーティストを知ったきっかけは3日前に始めたスマホゲー、アークナイツ。

ティザーPVで使用されていたのがこの曲。

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これが収録されているアルバムが『Vesseles』だった。

 

前半はFor You系ソングが多く割とダレたが、『Unbecoming』で水面へと墜落して怪物へと成り果てていった語り手の物語が紡がれ、次曲『Monster』に至る流れが爆発している。

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深く刺さったのは今んとこの2曲だけだが、突き抜けたburstと『Monster』以降もまあまあいい感じな曲(失礼!)が続くことから印象に残ったアルバムとしてカウント。

 

■月曜日 / amazarashi

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『月曜日の友達』という俺が好きな漫画用に書き下ろされた曲。

 

...らしいのだが、圧倒的なアンテナ不足により漫画の方は読んでおきながらこの曲の存在を知るのが2年半遅れた(アホ)。どうやら漫画作者の阿部共実とamazarashiは互いが互いのファンだったらしく、PVラストには原作にはない書下ろしのエピソードまで用意されている。スゲエ。

 

こう表現すると絶望的に俗っぽくなってしまうのだが、青春の曲だ(もちろん、俗っぽいことがイコール悪いとはならない)。

 

未来に対し無限の可能性拡張を宣言する系は苦手だが、かけがえのないものの永続性を信じ切れない哀切な願いが叩きつけられる系には心が躍る。性癖。

 

■余談

このブログは作品の感想を記録するために設置したものだが、音楽関連、要するに好きなアーティストの曲に関する記録はこれまで避けてきた。

 

もともと、曲の感想を記すことに強い苦手意識がある。音楽雑誌等を読んでいた過去、教養がない自分には解説内容が衒学的にさえ映るときがある記事が視界に入る度に苦手にしていたことや、アウトプットするにもせいぜい歌詞について言及するのが精一杯で、一定以上の識者たちだけが的確に言及でき得るボーカルやサウンドに関しては「なんか~からの転調がすごい。エモい」程度のことしか書けないことがその根底にあるような気がしている。もちろん前者はただの食わず嫌いとか偏見といった類にあたるのだが。

 

しかし俺は自分の視点から、外部への公開/非公開を問わず記録を行うこと自体は非常に有意義だと考えている。なのに音楽だけはアウトプットから逃げたいので書きませんでは、何かを得られる可能性自体を放棄することになってしまうなと思いなおした次第。己を裏切ったものは魂が放浪してしまう。

 

また記録したいものが出たら書くことにする。