シャニマスアイドルの前日譚が語られるS.T.E.P(面倒なのでSTEP表記)にとうとう浅倉透のストーリーが実装された。
ある種の解答編として、これまでのコミュではほのめかされるのみにとどまっていた浅倉の本音や心情、欲求が明かされる記念すべきストーリーでかなり満足度が高い。
【てっぺん】
<あの時>の前後を描いている。
浅倉がたまに見るジャングルジムの夢に対してどこまで意識的にはストレスを感じているのか、本人は言語化できていないが無意識にそう感じているだけなのかが気になっていたが、
近所の子に残酷な言語化をされていたことが判明。浅倉は向けられたものを素直に受け止めて「そっか」と納得し、なんとなくいい思いをしない夢がはっきりと退屈なものに定義され、そう認識していた。これをもってジャングルジムの夢は、浅倉の中で明確に呪いの意味を持つようになったということか。
<学生の男>こと未来のシャニPに導かれ、てっぺんへの到達を果たしたことで浅倉は快い気持ちのまま帰途につき、胸を弾ませながら眠りにつく。ここ帰り道の浅倉の声がめっちゃ弾んでてイイ。でもこの後の浅倉を俺たちプレイヤーは知っている...
【知ってる?】
英語の例題どころかタイトルを通してはっきりと言及されているが、中学時代の浅倉は自分でも何を求めているのかわからず、たまに見る夢に囚われたまま。
ちゃんと中学専用グラでピアス入ってないし髪がやや短い
クラスメイト達に容姿を絶賛され盛り上がられるも全然嬉しくない浅倉。
浅倉はGRADにおける優等生の学友のような、精一杯に努力してやりたいことをやっている──『息してる』人間を尊重する一方、自分の意思と関係なく先天的に得ただけのもの(=自ら努力して獲得していないもの)に対してひどく淡白であり、むしろ拒絶している。
<あの時>には希望に満ちあふれていた浅倉は結局どこにもたどり着けずにただのぼるだけの日常へ戻り、擦り切れているらしい。「どうでもいいよ」「何かになんてならなくていい」「どうせ、(人生)長いし」とやや厭世的になりながら屋上で空を見つめる。特に「どうでもいいよ」の声のトーンが完全に冷え切っており、この時期の浅倉は今より少々荒れていたのかもしれない。
放課後に雛菜達が待つカフェに向かう途中でスカウトされる浅倉。
ガン無視でさっさと行ってしまうかと思いきや、
・・・・・
飛べる?
モデル、なったら
真っ青を抜けて
真っ白なところに
真っ黒なところに──
絞り出すような本音で衝動的に問いかけてしまうが、道で行き合っただけのスカウトマンには全く理解されず悲しい顔をして去っていく。
本音では「何かになりたい」浅倉。これまでのコミュで語られてきたように浅倉はどこのプロダクションでも一度芸能人になってしまえば必ず大成するレベルの器を持っているし、この誘いを受ければ世間的な「何か」の上位者である成功した芸能人には必ずなれる。
でもそれは浅倉が自分の意思とは無関係に得ただけの優れた容姿やキャラクター性
を評価されてのものであり、それでは浅倉的には<息してる>ことには──何かを獲得したことにはならない。
無意識レベルではおそらくそこまでわかっているはずの浅倉が、このスカウトマンもただ容姿が良いから接触してきただけだとうっすら把握しているであろう浅倉が、ただの通りすがりの人間に悲鳴に近い本音をこぼしてしまう悲哀は深い。
空を見つめながら本心を明かす浅倉で【知ってる?】は終わる。
知ってる?
何を望んでるか
どうなりたいか
でも、知ってる
それは──
ねぇ──
どうすれば、飛べる?
ここ多分解釈別れポイント
「それは──」の続きには、「(今の)私にはたどり着けない」的な意味合いの言葉が、入ると推測している。また「ねぇ──」という呼びかけの対象はおそらく空だが、同時に<あの日>の学生に呼びかけていると読んでも問題は無いだろう(てっぺんに登ったときも空を見上げていた)。
【来たかも】
<なにか>の到来を待ち望んでいた浅倉はかつて出会った学生、シャニPと再会を果たす。ここで<あの日>と全く同じ声かけをしたのはおそらく何かを感じ取ったから。既視感を覚えたのはシャニPも同じで、らしくない(?)強引なスカウトの理由を述べる。
帰り道の声がはずんでる浅倉が良い。浅倉のテンションが爆上がりしてるシーンってだいたいそこまでに曇ってる様子を見せられてることが多いので、浅倉ファン的にはそれだけで嬉しくなっちまう。
待ち望んでいた存在が”バーンと”到来したのを嬉しがっている様子は樋口STEPでも描写されている。
【望む、空】
浅倉がシャニPに仕事の内容について電話で質問。
当たり障りのない会話が続いていたが、問いかけたシャニPから突然クリティカルなワードである「みんなが望む空に羽ばたけるなら」が飛び出す。
これはシャニP特有のポエミーな表現で、樋口WINGコミュでも使用していたフレーズだが、偶然にも浅倉の心情にマッチしていた。やっぱりあの時の人なのかもと意識する浅倉は、かつて「何かになんてならなくていい」と逆張りしていた屋上で同じように空を見つめながらのぼることを決心する。
シャニPのことを過去に良い思い出があっただけの人、じゃなくてたった今、ジャストな<今>でも期待させてくれる存在であるのを示唆しているのがかなり好ましい。この<今>の重要性は後々のコミュでも語られる。
アイドルになろうと思った理由を聞かれてお茶を濁す浅倉。これはかつて樋口がsコミュで聞こうとして聞けなかった内容だが、おそらく同じような答えが返ってきただろう。普段フランクかつ脊髄反射的に自分の感情や思考を発する浅倉が、はっきりと答えが自分の中にあると知りながらこういうごまかしをするのはかなり希少。アイドルになった理由以外だと、【途方もない午後】のレストランのあのシーンくらいしかパッと浮かばない。
ちなみに雛菜には"天塵"の【視界3】コミュでも、必要の無いネイルを口実にして逃げられない体勢にされてから同じことを質問され、同じく「なんでだろ?」と誤魔化している。が、雛菜には「プロデューサーにお願いされたから?」
と畳み掛けられて「そうかも」と認めている。雛菜強い~!
そして、アイドルになった理由の答えも、実装以来数年越しとなる本コミュではっきりと浅倉直々に言及される。
思い出したんだ
向こう側に、誰かがいたって
【そうなのかも】
前コミュの〆を引き取ってあの時の人なのかも、でかいやつかも、という期待を弾ませつつ事務所に向かう浅倉。
ここ樋口の時と対応が違いすぎてシャニPに文句言いたくなった(ちょうど事前連絡があった時点で席を離れられないか、気付けない状況だったのかもしれないが)。嫌過ぎる対比だ。
あの時の人なのか、と直接聞こうとするのを思いとどまり、シンプルに問いかける。
ここで、初めて(浅倉が望む)答えがちゃんと返ってきたのを受け、浅倉はやっぱりあの時の人なんじゃないかという確信を強めつつシャニPに信頼を置くようになる。
過去に良くしてくれたから、ではなく今、望むものを理解してくれている、望む行き先へ導いてくれると理解する。浅倉がシャニPの誘いを検討したのは過去の出会いがあったからだが、誘いに乗ったのは現在形、<今>のシャニPが変わらず何かを期待させてくれる存在だから。丁寧に現状を確認する慎重さは、ロマンチストでありつつも冷めた現実を知り、おそらくは失望に打ち砕かれてきた浅倉ならではのものだろう(期待に考慮なしに飛び込まず、冷静に観察を続けている)。
【思ったから】
おそらく飛んで最新時系列。
公園で朗らかに会話を交わす浅倉とシャニP。
何気なくシャニPが「昔の透に会ってみたかった」と語り、むくれる浅倉。
一度会ったことがある、自分で思い出してほしいってWINGエピローグでちゃんと浅倉が自分の思いを伝えたのにシャニPお前...あんないい感じかつ意味深な告白だったのにお前...
シャニPは<今>だからこそという点を強調して返す。これはあくまで過去のことは過去のことに過ぎないというニュアンスを含んでいる。彼は<あの時>に学生として幼少期浅倉に寄り添った行動やその時の心境をWING時に思い出しているが、相手の子にとってどうだったかという点には関心が向いていない。おそらく彼の性格的に、あの時の子は小さかったからもう覚えてないだろうけど俺の記憶には残ったなあくらいの感覚な気がする...
浅倉は「でも、また会えて──」と口にし、その先については「なんでもない」と返し、このように〆る。
浅倉にとって、シャニPは初めて出会った時からずっと<今>の道標のような存在でありつづけている。
だがそれだけではなく、浅倉がシャニPにはたらきかけて考え方を変えさせたり、何かにはっと気づかせるような描写も多い点も念のためここで触れておきたい。WING時点ですらシャニPに期待しすぎた浅倉が「あれっと思って」、曇ったりなどしていた(シャニPはスパダリではない)。特にLPでは一度浅倉がシャニPに仕事の不満を思い切りたたきつけていたし、その影響か【憶光年】ではシャニPが過保護になりすぎてモンペと化してしまっていたのを説得する流れすらあった【憶光年】はシャニPが一方的に喜びを供給するのではなく、一緒に喜びのみならず苦しみや悲しみも共有していく道筋を確定させた超重要コミュであり、STEPコミュ【思ったから】で共に遊んでいるのもこのコミュを経ているからこそである。
今回のSTEPコミュで明言された浅倉の内面は、これまで浅倉というキャラクターの内面を推察することしかできない都合から難解とされていた過去のsコミュを読み解く大きなヒントとなる。過去コミュを読んだ当時の感想の答え合わせであったり、読み直して新しい解釈を生み出す...ということも可能な筈だ。
特に【ハウ・アー・UFO】ラストでの人工衛星への問いかけはSTEPコミュを通してさらに味わい深いものとなったのは間違いない。今後もシャニマスを浅倉極振りで走り抜いていく所存。
いや~~~~やっぱ初期コミュから『運命』の概念を大事にしていたのってそういうことだよな~~~~~ 浅倉とシャニPがまわって音を鳴らす様子はまだまだ全然見飽きる気配が無い(まわるものをみつめるもの)
そして過去に鬱屈としていた浅倉が同じく鬱屈としていながらも激情を歌で綺麗に昇華できる樋口をリスペクトしているのも頷ける。樋口は常にややこしい感情と向き合っているからな。。浅倉がそのややこしい感情を発生させる元凶でもあるのが余計ややこしいが...
・おまけ
俺のゴキゲンな「歌詞で浅倉透を連想してしまう曲リスト」をくらえ!!!!
リスト
>過去浅倉
・疾走 / きのこ帝国
・Girl meets Number Girl / きのこ帝国
・From the Gekko / TACICA ※←youtubeプレミアム入ってないと上リストでは聴けない
>今浅倉
・疾走 / GRAPEVINE
・月虹 / BUMP OF CHICKEN
・望遠のマーチ / BUMP OF CHICKEN
・Voy@ger / 浅倉透solo ver
気を抜くと無限に追加してしまうので苦渋の判断でこれだけ
欲を言うと浅倉の歌うTwilight Skyを聴いてみたい