シャニマス 【pooool】浅倉透の感想

 

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良かった。同じくsSSRの「ハウ・アー・UFO」コミュ既読が前提な気もする。

 

浅倉コミュでは空の上に特別なものが見いだされる傾向がある。WING編はてっぺんへとのぼっていくことを決意する物語だったし、浅倉は【10個、光】では星を探すことを決意し、【ハウ・アー・UFO】ではUFO(または人工衛星)を求め、今回の【pooool】では月に想いを馳せる...と思いきや。

 

"UFO"と明確に違うのは、浅倉の中の物語が突然始まり、誰にも共有されないまま変質し、空の上へ問いかけることもなく、地上への着地で終わる点だ。月まで行こうとした浅倉の想いは誰にも伝えらないまま水のないプールへと行先が変わる。これを特別なことを目指す挫折と取るのか、違う特別を選択しただけだと取るのかは解釈がわかれるところだとおもう。

 

 

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2コミュ目「虫たちの夜」雛菜との会話はかなり大きい。浅倉が語る小説の中には月の描写が登場しないのだが、雛菜はいい感じの夜という要素から月を連想していた。

 

この概念の登場によって、浅倉達が水のないプールで過ごした何気ないひと時が、「(いい感じの夜に)月の下でざわざわしていた」と要約されることになる。筋書きから、作中小説内でざわざわしていた虫たちが幼馴染達と重なっている、かもしれない。断言できないのが浅倉コミュの魅力だ。

 

恐らくロマンに対して客観的な事実を認識してしまったこの時点で、あの夜抱いた月へ行きたいという想いに迷いが生じている。泳ぎたいと願った水の張られた空に近づくことはできず、水のないプールに落ちてきた月に見立てた偽物を蹴り飛ばしただけで、「ね、月」という語りかけも月からすれば虫の鳴き声と変わらないのかもしれない。

 

このあと、教室の窓からはあの日確かに足を運んだプールが見えることに気付く。クラスメート達の手によって窓は金モールで装飾され、それを通じて眺めることで金ぴかのプール像が完成する。安っぽい人工物だが金ぴかは金ぴかだし、浅倉のリアクション的にそれなりにいい感じではあるようだ。

 

ここまでなら水のないプール、地に足のついた現実的な何かも悪くはないよね~という着地ができるんだがこのゲームはシャニマス

 

3つ目のコミュ「プール・フール」では浅倉がいまだに迷いを抱いていることが突き付けられる。

 

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浅倉は漢字の読みクイズになんとなく連想した言葉で脊髄反射のようにして「玉虫色」と回答し、12月はざわざわしていていろんなとこでいろんなことをやっている・・・はずなのだが、『色んなとこでおんなじことをやっている』と思考する。

 

次に特別な領域、対象である月を思い、その直後に現実的に足が届く水のないプールを思う。

 

浅倉はプールを選択する。ざわざわしてるけど静かで、月が当たっていい感じになれる場所だ。おんなじ番組ばっかで退屈だね~という会話をしていたところで「プール行きたいわー」と言ったのは単純に思考が口からもれたのか、これから行きたいという提案なのかについては、樋口が「眠い。寒い」と即答していることから後者の可能性もある。雛菜は前者の解釈で「楽しかったよね」と返す。小糸はもうああいうのはだめだと拒否する。

 

幼馴染達の反応を見て浅倉は微笑む。月まで行ったり空に張られた水で泳ぐことはできなくても日常の中に非日常を見出すことはできる。プールもええやん。という〆になりかけるが、浅倉は一瞬だけ哀しい表情をして、「プール、行きたいわー」と内心で繰り返してコミュは終わりを迎える。

 

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浅倉は幼馴染達との穏やかな波のない日常をなんだかんだ楽しんでいるから、自分の視点から勝手に閉塞感ありそうとか退屈から抜け出せ無さそうとか捉えるのは失礼かな~と思っていたのだが、明らかに毛色がちがう。月と自分の隔たりを実感し、幼馴染達と過ごす時間そのものに希望を見出したのであればプールそのものには固執しないように思える。いい感じの夜、いい感じのとこへ辿り着けないことがもどかしいようにも見える。静かに妥協と挫折が描かれているようにも感じる。

 

また(みんなで)プールに行きたいと語るが、誰もまた行こうとは返さない(樋口・小糸は拒否している)。月を諦めて幼馴染たちとプールを目指そうとした浅倉だが、その妥協案すらも却下されてしまう姿は非常に切ない。最後の表情はそれを表しているように感じた。

 

タイトルに愚者が入っているのも無関係ではないだろう。

【pooool】というカード名はコミュ名にもそのままあるように、pool foolを略したものなのだろう。

 

別に幼馴染達が縛りになっている...というわけではなく、何も考えなくても全てを合わせてくれる程都合のいい存在ではないという事実を示しているにすぎない印象(「大体合ってるから、うちら」と感謝祭で語っていたし)。この点はイベントコミュとかで変化していく部分かもしれない。今回も小糸だけがアイドルとして自分たちをテレビの向こうに見出していたし。

 

pコミュでは特別な存在と接している時の浅倉、sコミュでは日常を過ごしている時の浅倉が描かれる方向になるのかまだ断定はできない。今後の浅倉コミュがどういう方向性になるのか気になるのでとにかく追っていきたい。石がぎりぎり枯渇しないペースでお願いしたい。天井なしだけは勘弁してほしい。

 

 

 

 

 

ああああ~~~~切ねえ~~~~~~

浅倉って豊かな感性ゆえにこういう人が知る由もない内心の挫折や妥協を密かに繰り返しているのかもしれないなーってWINGや"UFO"コミュを眺めて感じていたのだけれど、今回そういう輪郭が明確になったような気がする。浅倉という個の在り方を勝手に決めつけることはできないけれど、そう仮定するとWINGでシャニPにあの時の人を見出した後に噛み合わなくてあれってなってしまって、また特別を諦めて向き合って、その矢先に本当の特別だったことを再認識するという流れが浅倉にとっていかに劇的な体験だったのか、シャニPと2人のときの浅倉がなぜここまでテンション高いのか理解度が深まったような気もする。sで曇らせた分pで笑顔にさせてくれ。