シャニマス 海へ出るつもりじゃなかったし 感想

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まあまあ良かった。と書くとなんだか以前書いた天塵の感想と大分温度差がありそうなニュアンスになってしまうかも。本コミュでは中盤まで風のない緩やかで少し退屈な日常が丁寧に描写され続け、わかりやすいドラマティックさは抑制されている。俺はわりと満足な内容でした。

 

天塵でシャニPはいかにして彼女たちの美しさを伝えていくかという課題を背負っていた。本イベントで彼は芸能界と幼馴染達の世界との橋渡し役を請け負っている。数カ月経過しても相変わらずルーズな問題児集団に対しできる限り彼女たちらしさを尊重しながら仕事を探す。明るい部屋コミュから引き続き、仕事としてアイドルをやってもらう上での説教も行い、それと同時に彼女たちにどうなりたいか自分で考えてみて欲しいと伝えている。もうプロデューサーというより教師みたいだ。

 

ノクチルがゆるいスタンスをとっていることはこれまでも描写されてきた。プロデュース開始からおそらく作中で数カ月経過してなお仕事の連絡を小糸以外既読スルーした(浅倉は寝ぼけていた)のは年末だったし個人的にも似たような経験があるので飲み込める。しかし浅倉と樋口がコンビニ寄ってミーティングに遅刻するくだりまでくると、シャニPの彼女たちへの向き合い方の一面を強調するために過剰に盛り付けられた展開のように感じてしまった。今振り返っても引っかかる。これは俺がpコミュや感謝祭時点の彼女たちを念頭に置いているのがよくないのかもしれないが...。プロデュース開始から少なくとも数か月は経過してるわけでこういう遅刻は初めてではなく以前にもあったはずだし、シャニPの性格的にはその過去の時点でマジレスしているほうが自然で、そして浅倉も樋口も言われたことはきちんと守るタイプ(作戦会議へ向かう途中にちゃんと連絡を入れる浅倉のシーンもある)。と思っているのだが、俺が解釈を間違えているだけかも。

 

シャニPが条件として優勝を提示した本当の意図はすぐに察せられるものになっている(記者がわかりやすく言語化までしてくれるフォローつき!)。普段のシャニPなら何故その条件をつけたのかも細かく補足説明しそうだが、そもそもノクチルは普段のやり方が通用しない集団なので(正面から言うだけで素直に全てを受け入れてもらえるなら彼もここまで苦労してないだろう)、彼なりの工夫で変化球を投げたと解釈している。もちろんただぶん投げるだけではなくて、「見えてるものが変わるって思う」と付け加えているのがツボをおさえている。浅倉(というか、たぶん樋口以外)のモチベは確かに引き上げられた。

 

彼女達がノクチルとしてひとつの目標に向かって懸命に取り組み、昔浅倉が読んだ小説と重なって綺麗めに物語が〆。あくまでもアイドルとしてどうこうではなく、彼女達自身が認識をアップデートさせ、それによってアイドルとしての活動の場の意識にも変化が生じていく、かもしれない──くらいの温度感。アイマスシリーズ的な文脈からの要請を巧みにいなすようなやり方のバランス感覚の良さは健在(いい加減くどいし、それ自体に価値があるみたいなカンジになるとズレてしまうのでこういう言い方はこれっきりにする)。隠喩っぽい要素が多々ちりばめられていたり、小糸が葛藤していたりするがわざわざここに羅列していく必要性を感じないくらいに内容がまとめられていた。

 

要約してしまうと筋書きとしてはシンプルだが、これまでsSSR浅倉の2つのコミュを挫折、妥協、諦念の物語として読んできた自分には、とうとう風を感じ始めて楽しそうにしている浅倉を拝めたのはかなり良かった(後日談「かんぱい」まで含め)。浅倉は天塵では一切モノローグが無かったが、まさかここまでマシマシにしてくるとは。

 

 

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完璧なタイミングに(みんなで)跳べば、(きっと)「ほんとの世界になる」。

浅倉ワールド全開。最高

 

 

今はただ、次はどのような物語が描かれるのかに興味が膨らむばかりだ。ノクチルは天塵でいつか約束した海にたどりつき、本コミュでは帆走を開始した。この流れ自体は非常に好ましい。いつもの悪癖で次の展開に進展や真新しさがすくなかったらなどと杞憂へと回帰しそうになったが、もう2021年だし、いい加減勝手につまらない未来を想像するのは楽しみをみずから目減りさせるだけだと戒めておく。

 

今後ユニットイベをやる上では、感謝祭時点でも変化を拒んでいるように見える樋口のアイドル意識がどう扱われるのかも気にかかっている。GRADでそこらへん整理して、次回イベの時系列はGRAD後とかだといいなあなどと妄想して期待を膨らませておこう。

 

 あとここ好き

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晦日ジャンプの時点では(きっと)「ほんとの世界になる」だったのが、目標に向かって邁進してる瞬間に風を感じて(もしかすると)「本当の世界になる」に変化している。シンプルに良い。本当の世界の景色そのものは見えなかったけどその景色が存在すること自体を期待できるようになってる塩梅がな~~~~~~~いいんだよな~~~~~~~~~