シャニマス 【夜はなにいろ】浅倉透 の感想


完飲。

 

 

浅倉透を浅倉透たらしめる特徴として、浅倉のすべてを把握することはできない点は今でも真っ先に挙げたくなる衝動に駆られている。神の視点を持つプレイヤーの特権として浅倉の無意識モノローグや思考の断片を覗き見することはできるけれど、浅倉の脳裏をかすめるそれらはあくまでもフラッシュアイデアの段階に過ぎない。瞬間的に感じた/考えたことを脳内で咀嚼して、時には鮮やかに表現して見せる──浅倉はアウトプットが壊滅的なので、それすらうまく機能していないシーンも目立つ。

 

ざっくり言うと浅倉は何を考えているのかわからないところがある。すごくわかりやすい部分も併せ持っているけれど、それでもなお何年も追ってるプレイヤーでも浅倉に何が見えているのか、何を言おうとしているのかを断言できるようなシーンは少ない。ただ拾った情報をもとに拙い推察を重ねることしかできない。

 

すれ違いまくっていたW.I.N.G初期に始まり、Landing Point~【憶光年】では不穏な空気を吹き飛ばすようにして浅倉との付き合い方を改善してきたシャニPも、もちろん浅倉の心情や視点をすべて把握するのは不可能。この【夜はなにいろ】ではその点が強調されていく。

 

まずは【世界封切り】コミュ。

事務所の一室を暗くして擬似的な映画館環境を作り出し、モノクロ映画を観ている浅倉に出くわすシャニP。暗くてモノクロでは話もわからないのでは?と問いかけるシャニPに浅倉は言う。ただ見ているだけだから話は追っていない、「見てるだけ 形と線 あと、色」。

 

色が見えるのか、とのリアクションに「見えないの?じゃ、私は?形?線?色?」と畳み掛けてくる浅倉。

 

シャニPは浅倉が見えてるようには見えない。浅倉に見えているものを知ることができない。ただ、モノクロの映画に色を見ることはできないが浅倉の瞳について「いろんな色を反射してるみたいに見える」と言及している(浅倉に問われた内容とは無関係だが、浅倉のことは見えている)。

 

続く【あじする】コミュでは通常感じとれないような微細なもの、降っているちいさきな雪の味を感じ取れる浅倉、何も感じ取れないシャニPが対比される。

 

【夜の器官としてぼくら】コミュではシャニPの語りに変化が見られる(どのような変化なのかは後述)。夜は何色なのか、と浅倉に問われるがやはり答えられないシャニP。

 

浅倉は別に自分の見えてるものを全部わかってほしいわけではない。それ以上にシャニPには何が見えているのか、何が映っているのかという点を気にしている。だから夜が何色なのか答えられず(おそらくは)気まずい顔をしているシャニPに気を回して空だけを見る遊び=手軽な代替手段を提案しているのだろう。

 

 

シャニPはこの瞬間から<透に見えてるもの>への執着を脱し始めている。夜の暗闇でころんだ浅倉の顔に貼られていた赤いハートマークシールが強く印象に残り、この夜を自分には「赤いみたいに見えた」と語る。また本コミュでは台本のト書きやドキュメンタリーのナレーションのようなシャニPの語りとカメラ・レンズカットが随所で挿入され、シャニP側が浅倉の意志を汲み取る方向に盲従するのではなく、むしろ主体的に自分に見えていたもの/見えたものを語るような構図となっている。シャニPはまじりっけなしの空だけを、浅倉が見ていた風景を見ることはかなわなかったが、自分に見えている/見えたものを大事にできるようにはなった。

 

続く【いろする】は浅倉の心境の大部分が明言されている珍しいコミュだ。

 

しつこいスカウトをいなしながら、浅倉は冒頭で見ていたモノクロ映画で唯一憶えているシーンに思いを馳せている。浅倉の到着を待つシャニPは、浅倉が見えた瞬間、その人物が浅倉だと<判別する前に>「モノクロの画面に色がつく」「誰だろう、すごい」と衝撃を受け、眼前にやってきた浅倉に虹色のようなものを見る。

 

 

虹色のようなものと書いたのはなぜかというと、このメッセージ表示はシャニPのモノローグやセリフが入る際とは異なる色になっている。つまりシャニPが垣間見たもののヒントにはなっているが、シャニPに見えたものすべてを表しているわけではない。それならいつもの灰色のボックスの中に「虹色」とか書かれている...はず。

 

ここは最初の【世界封切り】で浅倉が暗闇のモノクロ映画で何のシーンに、どのようなたぐいの色を見たのかが判明すると同時に、浅倉だとわかる前から目が吸い寄せられ、浅倉が”見える”シャニPの様子だとか、また浅倉もシャニPを"見ていた"ことも示すかなり粋なシーン。初見時、勢いで席を立ってから座り直した。

 

 

作中映画での天使との邂逅シーンと重ね合わせられるような合流。

お互いがお互いを見ているのでもはや形や線に齟齬は無く、

見える色も方向性的には完全に同一ではないが、同じ方向と解釈していいだろう。

(浅倉視点での背景描写はオレンジ系の明るい光だったが、どんな色だったのかは明言されない)

 

 

【ある】

 

決着回。

 

舞台はふたたび真っ暗な部屋へと回帰する。浅倉は疑問を問う。噛み砕くと「黒とは黒い色があるということなのか、色が無いから黒いということなのか」という内容で、どっちも似てるなあと返すシャニPにやっぱり畳み掛ける浅倉

 

なんかもう露骨に期待しての振りだよなこれ...

 

ここでシャニPに視点が移り、これまでの【夜はなにいろ】内のコミュの背景にカメラ・レンズを重ね合わせる演出が挿入される。最初のコミュでは見るべき方向を誤っていたシャニPもこの段階では既に浅倉に見えてるものへの執着を脱却しているから、素直に自分の視点を基にした返答が成立させられる。

 

率直に「あるよ」と断言する。

 

浅倉に提示された 黒 / ない の2択ではなく、自身のものさしに近しいものを並べ、「そういう全部みたいに見える」と答えてみせる。

 

そして真っ暗な部屋でも浅倉が見えてるシャニP視点の示唆、

 

返答を聞いて満足気に笑った浅倉が見た色(のイメージ)が出て〆

これは【いろする】でシャニPと目があったとき浅倉に見えたのと同じイメージ。

 

 

ンン"ッッ 完飲!!!!

何気なく口にした疑問も大事だけど、浅倉にとっては「(相手から)私が見えるかどうか」の方も肝心な点であって、そこが「わかってればいいじゃん」なスタンスなのかなあとか...思っちゃいますね。

 

・余談

 

 

最初の恒常pSSR【10個、光】時点で<昼の間も光ってるもの>がちゃんと見えてるとシャニPは断言していたけれど、3年越しとなる(!?)2枚目恒常pSSRの今回では暗闇でもちゃんと浅倉が見えるようになる...真っ黒な空間でも、<黒>とか<ない>とかではなく、浅倉は<ある>と断言できるようになっている。こういうの、時間経過系コンテンツの強みが出ていて非常に良いですね