犬ヶ島 感想 ※ネタバレ含

めちゃくちゃ面白かった。興奮しすぎてこの映画の感想を検索かけまくった....が、こうした良作品の消化をより良い体験に昇華してくれるレビューに巡り合うことができなかったので俺なりの解釈を熱があるうちに殴り書いておこうと思う。まだ一度しか視聴できていないので、間違っている可能性は大きいが.....

 

 

日本への愛にあふれてる!とかぶっちゃけブログに書く上ではどうでもいい話にはわざわざこんなブログで触れたくない。邦画は詳しくないので黒澤オマージュもパス。

犬と人間の主従関係の始まり....最高の形で描いている。ストーリー上必要が無い場面でも異常なクオリティで緻密かつ豪快に描写している.....たしかに。

 

でも俺が書きたいことはたった一つ。

 

■小林市長の変化について

本当にすごいやり方だと思った。

終盤アタリが乗り込んできた後、真実をぶちまけられ激怒するが、古き因縁(少年侍の反逆)と現在の状況を重ねてしまい、畏れを露わに怒りを鎮める。

ところがアタリ君のスピーチが秀逸で、小林市長が両親を亡くした自分を引き取ってくれたことを、「野良犬だった僕を拾ってくれた」と表現する。

かつての昔話である少年侍がナレーションから察するに人間に反逆し討ち死にした(最後まで対立し続けた)のに対し、アタリ君はこの比喩表現によって人間と犬の近しさを完ぺきに表し、和解の道を打ち立てている。

 

もちろん小林市長がアタリ君を拾った理由には政治的な打算も大きく関わっているのだろうが、意図と関係なくその行為に恩義を感じると表明されてしまうと情が生まれるということは、既に劇中で示唆されている。

 

チーフがアタリ君の再三の「取ってこい命令」に対し、「主人と認めたわけじゃないが、お前が哀れだから従ってやろう」と言いながら嫌々応じたシーンがそれに対応していて、実のところ嫌々命令に従っただけだったチーフに対し、アタリ君は自分の言うことを聞いてくれたチーフを「いい子だね」と褒め称えて抱きしめ、風呂に入れて、愛犬用のビスケットも食べさせてしまう。チーフは驚くと同時にここで初めてアタリ君に恩義を感じ、主人と認め始める。

 

おそらくコバヤシ市長は前述したアタリ君のスピーチによって「人間の立場から」犬の素晴らしさを理解することができたのではないかと思う。だからこそ犬虐殺ボタンも全力でストップするし、アタリ君に腎臓を提供することも構わない。

 

人間(小林市長)-犬の対立関係が、

人間(小林市長)-アタリ君-犬で綺麗につながってしまい、コミュニケーションが健全化するという流れの爽快感はすごい(欲を言えば小林市長とアタリ君が共存してほしかったが、まあ教授ぶっ殺しちゃってるし犬も死なせてるし、報いを受けることを回避できないのは仕方なかったのだろう)。

 

マジで最高すぎて頭がしびれてるんだけど、なにぶん興奮しっぱなしで視聴した久々の映画だったので、高まりすぎて記憶違いが含まれている気がしてきた。

 

小林市長は市内の犬を全滅させようと目論んだ危険人物であると同時に、アタリ君が事故にあった直後には、彼の護衛・介護に大嫌いな筈の犬をつけている。つまりアタリ君への情も一応あったのではないかと考えられる(劇中ではアタリ君失踪についてはあくまでも公的な視点、すなわちテレビニュースでしか描写されていなかった)。こういうクドさを出さない人間関係いいですね。