『メロディ・リリック・アイドル・マジック』 感想

 

 

 

いつ読んでも面白い(この小説が出たのも、もう2年半前になるのか...)。

 

 

音楽が不気味な存在に変換されてしまうという異常性を持つナズマが、下火の歌によって救済されるシーンがやっぱり一番良い。

 

勿論、話をつくるだけならナズマの異常性設定をオミットして、単純に下火が特別可愛くてドキッとしたからとか、誰よりもキラキラしてたとか、そういうきっかけでも可能だったかもしれないが、ナズマが音楽を忌避する異常性を有していたからこそ、障壁を解除できる下火を唯一尊きものとして見なすことになったし、熱心に彼女を世界へ広めようとしていくようになり、受動的だった彼が能動的に活動し始める展開に強い説得力を与えている。最後のライブ後にナズマが下火の祝福が観客に届いていたことを噛み締めるシーンのすばらしさたるや。

 

下火を神聖視し、彼女が選んだアイドルというやり方でその祝福を広範囲の人々に届けたいからこそナズマは恋愛感情を切り捨てることになる。恋愛ものって意外と難しいというか、安易にそういうのをやってしまうと、アイドルとしての下火の決意とか諸々がラブストーリーの副産物になってしまう可能性があったので、そっちに行かなかったことに安心。元々普通に異性として好意を抱いていたナズマが恋愛感情を自ら破棄するからこそ、その強固さを表すことにもなるのでバランスがとれている。

 

ベネ。