2019年 上半期に読んだ漫画とか小説とか書籍とか

■僕の心のヤバいやつ

陰キャ少年と彼が想う少女との関係や距離感があまりにも絶妙。最初は少年にドン引きしていた女の子もだんだんフレンドリーになってくれるけれど、心の奥底ではどう思っているのかはハッキリとわからず、読者としてはそのあいまいさがたまらなかったのだけれど...まぁ以前にも書いた通り、コミックス2巻終盤部分に相当する回で両想い尊い系漫画に変質してしまった。

 

正直なところ最初から両想い展開を予定していたのかどうか疑わしい点はある。twitterで作者が本編のパラレルワールドかのような両想い物語を番外編として発信していたけれど、作者がそれに対する読者側の反応を確認してから路線を切り替えたという可能性もあるだろう。本当のところは知りようがないし、真相を知って益があるわけでもないのでもう忘れるけれど。

 

音楽性が変わりメジャーシーンへと移っていったのは残念だが、僕ヤバの途中までの輝きを忘れることは難しいだろう。君はじゅうぶんヤバかった。

 

 

衛府の七忍

かなり好き。

 

善悪が勢力ではなく個人に属している点が特に好み。シンプルな勧善懲悪が描かれていることにかわりはないけれど、良い組織に属しているから善であるとか、悪い組織に属しているから悪であるとか、そういった前提は感じられない。

 

沖田総司がタイムスリップしてくる単行本最新パートが特に素晴らしくて、「新選組」自体は地獄に落ちるような悪行も働いているということを示唆しているものの、それに属している沖田総司が『誠』を信じ続けるまっすぐさが爽快。そこらへんの矛盾について、沖田はどうやって折り合いをつけてるんだよ?という掘り下げたらかったるくなりそうな部分に対し、具体的な言及をしないのがかえって快い。もしかしたら最新刊の続きでされてるかもしれないが。

 

 

■ここは今から倫理です。

 主人公の先生(たかやな)のキャラが立っている。

 

ストーリー自体は性善説というか、若者はみんな大変だけど良いやつだし頑張ってるよねというような陳腐なものだが、そうした若者と向き合い、指導する主人公が程よくボンクラだからこそあまり鼻につかず、バランスがとれているような印象。

 

とはいえ、2巻最初の自称S女に対して主人公がいきなりあなたにはお姉さんへの劣等感が~とか指摘し始めて、しかもそれが正解だったシーンはかなり鼻についた。こうした人間性を題材とした物語の中で、導き手としての無謬性を担保されるようなキャラクターが出てくると、うさんくさい神話になってしまう。たかやなは苦しんでこその主人公であり、預言者になってはキャラクター性が台無しではないか。

 

 

■天冥の標

天冥の標? メニー・メニー・シープ(上)

天冥の標? メニー・メニー・シープ(上)

 

 前々から気になってはいたものの、続刊待ちで生殺しされるくらいなら完結するまでは読まねえと考えていたらとうとう完結したと聞いて読み始めている。

 

1巻が壮大なプロローグに過ぎないような大河SFっぷりなのだけれど、巻ごとに舞台やテーマが異なるのが特徴で、パンデミックへの対抗、スペースオペラ、農業、ポストアポカリプス等多岐にわたる。まだ最後まで完走できていないが、非常に楽しめているのでじっくり味わっていきたい。

 

小説等での性的な描写が苦手なのだが、ゲームオブスローンズばりの唐突さでその手のシーンに切り替わることがあるので割と戸惑う。愛とセックスがテーマになっているっぽい4巻だけは途中でギブアップして次の巻に進んでしまったことを懺悔します。

 

 

■ファスト&スロー

ファスト&スロー (上)

ファスト&スロー (上)

 

そこそこ 面白かった。

 

かなり皮肉的というか冷笑的な内容となっており、人間のあらゆる思考にはバイアスが働くからお前ら注意しとけよという主旨の事例・メッセージがひたすら繰り返されるのが基本的な流れ。本当にずっとそんな感じなので後半はちょっとダレた(でも本当に面白かった)。

 

 

■ファクトフルネス

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

 

世界に対してのスコープを調整する役割を持つ本なので、「ファスト&スロー」と若干被っている箇所もあるが、こっちはネガティブな思い込みから解放され、ポジティブに世界を見るための書籍となっている。多分「ファスト&スロー」と合わせて読んでおくとバランスがとりやすいのではなかろうか。

 

 

■HARD THINGS

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

 

ふと、「めちゃくちゃ優秀な経営者というのは一体どういう考えを持っているのだろう」という疑問が頭に湧いてきて、amazonで適当に検索してたらこの本に行き当たった。

 

めちゃくちゃ面白かった。

 

成功体験ではなく失敗体験が、華麗に仕事を終わらせたときの喜びではなく社命を左右するような困難にぶちあたった時の苦しみが、仕事を成功させる方法ではなく仕事が失敗しない可能性を上げる手法が、丁寧に書かれている。

 

どちらかというと経営者向けの本だが、ヒラの俺でも最初の次から次へやってくるHARD THINGSの数々にどうやって著者やその周囲の大人物が対処していったのかを読んでいるだけでかなり楽しめた。今後何度も読み返すことになりそう。

 

■武器としての交渉思考

武器としての交渉思考 (星海社新書)

武器としての交渉思考 (星海社新書)

 

 尊敬する上司から「これ面白かったよ」と頂いた本。

書かれ方こそ学生向けなものの、内容は社会人向けだった。

 

人とのコミュニケーションは伝書鳩ではやっていけないし、人と人との間に入っての調整となると更に複雑さが増していくもの。そういった点について、四苦八苦しながら自身に定着させていった考え方の模範解答がさらっと掲載されており、ちゃんと勉強していればもっと人生の効率は上がるんだなと実感させられた。