2022年の映画を振り返る / アークナイツ 塵影に交わる残響の感想

■今年観た映画を振り返る

スパイダーマン ノーウェイホーム

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スパイダーマンファンへ向けた最高のサービスと新スパイダーマンの昇華、両方を巧みに達成していた。トム・ホランドスパイダーマンは今後も楽しみなシリーズになった。ただ俺はMCUを追うモチベが低いため、次回作でクロスオーバー要素がどのように・どの程度入るかも気にかかっている。

 

バットマン -BATMAN-

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ノワールに浸らせてくれる良作。アメコミ特有のテンポやコマ割りの雰囲気をそのまま映像化することに成功していて、何よりそれがイケてた。観てる最中にアメコミが動いてる!とか感じていた。

 

・シン・ウルトラマン

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主に外星人同士でのいかにも非地球人的な会話や発語が良かった。ただ、シン・ゴジラ同様のフレーバーを期待する人にはあまり薦められない。同作を彷彿とさせる、というか同種の展開や演出が露骨に再起用されているのだが、単にスケール・ダウンを感じさせるだけに終わっている。

 

・劇場版 Gのレコンギスタ

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G-レコが無事に完成する様を映画館で見届けられて満足した。

 

TV版にらベルリがノレドを放って放浪に出てしまうラストは、人間同士のプリミティブなつながりを重視する手触りで進行しておきながら『オトコの道』路線に行ってしまうのでは本末転倒だろう!とか、ベルリのドライな一面は作中でも描写されてて好みだが度を超えているなと思わざるを得なかったけれど、劇場版ではノレドのしたたかさがベルリの独りよがりなドライさを上回っている。パンフによるとキャストらの声を受けた富野が検討の末対応したようだ。若者に向けたアニメだから若者の声を聞く、舞台裏も含めていいストーリーに仕上がった。

 

・RRR

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2022ベスト映画。

ラージャマウリ監督の次回作を待て!

 

・HIGH &LOW THE WORST X

ハイローシリーズでもっとも完成度が高い。

このシリーズはキャラアクション音楽台詞による瞬間最大風速の圧でシナリオ演出etcの粗をカバーしていて、加点方式で観るのが無難だよねーって鑑賞態度に落ちつくのが定番みたいなとこあるんだけどザワクロは違う。アクションや演出に込められたパワーが歴代随一なのもあるが、何より不満ポイントが限りなく少ない。もちろん鑑賞後俺たちは叫んでしまう、芝マンと辻のバトルは?轟vs風神雷神はなんで削った!?と。でも本当にそれくらいだったなあ(センシティブ寄りな女性向けサービス描写もあったけど最終決戦の布石も兼ねてるから俺はあまり気にならなかった)。

 

フジオの凶暴ヤンキーとしての一面がかなり好みだから当たり外れを決めるのは俺側なんだよってオラつくシーンもイケてたが、何より高城司だよ。ザワゼロで実質主人公張りながら肝心のザワでは鬼のように空気で、2018年の俺は劇場で呆然としていたのだけれど、ようやく前日譚の熱量に見合った役割が回ってきたね…。

 

ハイローシリーズでよくある流れとして、序盤若者同士の激突が1番おもろいんだけど結局若者同士が団結して悪い大人と戦って終わりがちなのがあるのだけれど、ザワクロは徹頭徹尾ヤンキーvsヤンキーなのも良い。一定の利益を確保してる満たされた大人が相手じゃつまらん、飢えたやつら同士でガンガン喰らいあってくれ

 

余談。ザワクロは俺的エンタメ作品としては95点クラスをたたき出したのだけれど、このあとザワ見直したら見劣りして70点くらいのパワーしか感じられなくなってて驚いた。バーフバリ2のあとに1を観るアレだ…!(バーフバリ2は採点がおこがましい、1は65点くらい)

 

犯罪都市 THE ROUNDUP

爽快エンタメバイオレンスアクション!

往年のシュワ映画好きには喜ばしいパワー系無敵刑事が無双する作品で、前作に続き劇場で興奮させてくれた。

 

割とすぐベトナムから韓国に戻るのは予想外だったが(製作の事情)、豊富なバトルステージやギミック演出の秀逸さが目立つため全く気にならなかった。特に最終決戦の舞台とカメラの移し方は大興奮モノ。隣の女性グループ観客(たぶんLDHファン)は容赦ないバイオレンス描写を「やばい、目覚めそう」と評していた。

 

前作では敵が最終決戦時には愛用武器を喪失しておりパワーダウンが否めなかったが、今回の敵は狂人のくせに狡猾なので最後まで専用装備を手放さず、フルパワー状態での激突となったのもかなり満足度が高い。ソクト兄貴が即興で装備をクラフトして対応してるのも激アツであった…!

 

良かったけど残念でもあるポイントはイスの生存か。お前絶対死んでたやんって人の無事な姿が出てくると凄惨なバイオレンスの妙味が損なわれてしまう。ギャグ枠になったからセーフ、でいいのか…!?

 

 

予告がハイローアトモスフィアに包まれててウケた

 

 

■アークナイツ 塵影に交わる残響

今年を締めくくるに相応しいシナリオイベントだった。

 

憎悪が渦まくしょーもない世界を容赦なく描写した上で善性を捨てず希望をもって運命に打ち勝つアークナイツの黄金パターン的筋書でエーベンホルツらが描かれるのは素直に心地良かったが、それ以上に待ち望んでいた類のキャラクターが現れたことがうれしかった。

 

ゲルトルーデ・ストロッロ

 

 

生まれた時点から抜け出すことが叶わない陰謀に取り巻かれ、無能だった兄を自ら殺害し、復讐者と化す。"厳然たる現実"に心身をやつし、心の底から好いている人物にさえ嫌悪されている。

 

そんな彼女が最後の抵抗として振りまくことを選んだ呪い、必死に貫こうとした意地は愛おしくすらあったが、それすらも希望を見出している人物に残酷に要約された上で殺害されてしまう。周囲のほぼ全てに呪詛を吐きながら落命する彼女はしかし、最期まである人物にだけは憎悪を向けることがない。

 

もちろん彼女はアークナイツで五指に入るお気に入りキャラとなった。アークナイツはシナリオや世界観が冷たいとか人の心が無いとか言われがちだが、やはり過酷な境遇を強く生きる人間を称賛する向きが強い。一方でシナリオ上でそれに相対する敵対者として登場した魅力的なキャラはフロストノヴァが最後、それ以降はしょーもないチンピラとか人をいたぶるのが好きな面接で落とされた人くらいしかいない印象だったが、ゲルトルーデは秀逸だった。自分の肉体的魅力さえ利用しようとしてうまくいかなかったと明言したのには本当に驚かされた。アークナイツ作中でこの種の性的なニュアンスの言動を目にしたのはこれが初めてだったし、自ら堕ちる道を選んだ者として飛び抜けて印象的な肉付けとなった。ここまで怨嗟に飲まれた堕落ぶりを強調されながら最期までチェルニーへの想いは変わらないのは本当に絶妙なバランスで良かった。擁護不可能で救いようが無い人物が一線だけは守り通す姿は染み渡るなあ…。(どこまでも執着が強い女

 

このレベルのアークナイツ現実折れ勢もっとください